横井茂に関する論考

戦後創作バレエの歴史を語るに際して欠かせないのが横井茂の存在である。
1930年生まれ、今年で傘寿を迎えた横井は能楽宗家に生まれたが、戦後間もない時期に上演された第一次東京バレエ団による『白鳥の湖』を観て感激し、バレエの道へと足を踏み入れた。小牧バレエ団で踊り手として活躍後、振付家として活動し1957年の『美女と野獣』にはじまり1960年代以降のシェイクスピアに題材をとった諸作や日本の近現代史を凝視した作品を発表し一世を風靡してきた。一昨年の舞踊生活60周年記念公演では、新作『トロイの木馬』を発表。衰えぬ創作意欲を示し話題となった。
そんな横井の業績を研究・紹介した論文が昨年末に発表された。横井が長年舞台芸術科の教授として教鞭を取って後進を育ててきた大阪芸術大学の藝術研究所発行の紀要「藝術」32号に掲載された「日本の現代バレエを切り開いた舞踊家―横井茂の軌跡―」である。著者は、同大学の客員教授で演出・英国演劇を専門とする吉岩正晴。横井とは公私にわたって20年にわたる付き合いがあるようだが、その見聞にも基づき、また横井へのインタビュー、資料調査を踏まえて横井の創作の道程を分析している。今後のバレエ研究において大変貴重な資料となる論考だと思うので紹介しておく。

吉岩正晴「日本の現代バレエを切り開いた舞踊家―横井茂の軌跡―」(PDF)
http://www.osaka-geidai.ac.jp/geidai/laboratory/kiyou/pdf/kiyou32/kiyou32_05.pdf