英国ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』

今年の一大イベントのひとつ英国ロイヤル・バレエ来日公演の最終演目のケネス・マクミラン振付『ロミオとジュリエット』は、スケジュールの都合上、リャーン・ベンジャミン&エドワード・ワトソン、吉田都&スティーブン・マックレーの2組で観ることになった。
大ベテランであるベンジャミン&演技派のワトソンの舞台はマクミラン版「ロミジュリ」とはかくあるべしと思わせるもの。ベンジャミンは、初心な少女が恋に目覚め大人の“女性”へと変わりゆくさまを、ワトソンは、熱情的なロミオを余すことなく演じ切った。若手ダンサーとは一味違った滋味あふれる演技でありながら、疾走感あふれるマクミラン版ならではのドラマティックな展開の魅力を堪能させてくれた。同日のマキューシオ役を日本人ソリストの蔵健太が務めたのも話題に。蔵は闊達な演技と踊りを披露して喝采を浴びていた。蔵の出身地・北海道の関係者も会場に詰めかけていたようだ。
東京公演最終日は吉田都のロイヤルでの最終舞台となるため大入満員。テレビカメラも何台も入って開場前からホールは熱気に満ちていた。そんな喧騒とは裏腹に、都さんは、これで最後だからといった気負い等はいささかもみぜずにストイックに役に入り込んでのプロフェッショナルな演技姿勢を最後まで貫いたと思う。都さんは、ドラマを牽引するタイトル・ロールであっても、自分が自分がと押し出すことはなく自然体で演じるという、作品に対する常なる献身の姿勢を持ち味とする。それが、アシュトンやマクミラン、ド・ヴァロワといった英国バレエの珠玉の作品を誰よりも輝かせた大きな要因だろう。同時に作品が輝くことによって都さんもいぶし銀の存在感を放つ。舞台の中心に収まり、オーラを発することは、天与の資質や不断の努力に加え、人々に愛される人間性の素晴らしさがなければ成し遂げられないだろう。カーテンコールでも、観客の万雷の拍手に応え、劇場関係者や同僚からの花束を受け取りつつ、間を置かず舞台後ろに居並ぶ団員たちに感謝のレべランスを深々と捧げる。都さんの謙虚な素晴らしい人間性をあらためて目の当たりにし、深い感動を覚え帰路に就いたのであった。


吉田都 終わりのない旅

吉田都 終わりのない旅