「ホフマン物語」オペラ&バレエあれこれ

Noism1&2合同公演 新潟限定 劇的舞踊『ホフマン物語』の初演が迫ってきた。
オペラの「ホフマン物語」はよく知られよう。主人公の詩人ホフマンが、歌う人形のオランピア、瀕死の歌姫アントーニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタと次々に恋に落ちるも成就できないというものだ。ジャック・オッフェンバックの作曲。バレエ「くるみ割り人形」の原作となった童話「くるみ割り人形と二十日ねずみの王様」を著したドイツ・ロマン派の詩人E.T.A.ホフマンの小説から3つの物語を用いて脚色したジュール・バルビエとミシェル・カレの同名の戯曲に基づきジュール・バルビエが台本を執筆した。1881年2月10日にパリのオペラ=コミック座で初演されている。未完のままオッフェンバックが死んだこともあって、これまでにさまざまの版が存在しているようだ。日本では東京二期会オペラ劇場、新国立劇場が上演したほか、今秋行われる「愛知トリエンナーレ」のメインプログラムのひとつとして制作されるのも音楽界の大きな話題となっている。
今回新制作されるNoism/金森穣版は、ホフマンの小説「砂男」「クレスペル顧問官」「大晦日の夜の冒険」を基に新たなストーリーを紡ぐという大作舞踊劇として独自に構想されるとのこと。音楽もオッフェンバックではなく現代音楽家のトン・タッ・アンによるオリジナルなものというから、観るまでは舞台の予測はできない。観劇前に無理に「お勉強」をすることはないし、振付家も付け焼刃の前知識など持ってみてほしくないかもしれないが、ホフマンの小説世界やオペラについて調べてみると、より深く味わえるかもしれない。それはパフォーミングアーツ・ファンの楽しみのひとつでもある。
さて、バレエ&ダンスで「ホフマン物語」というと、何といっても「赤い靴」で知られるモイラ・シアラー主演で1952年に制作された映画が挙げられよう。ソプラノ歌手役がプリマ・バレリーナに設定変更され、バレエ・シーンもある。振付はフレデリック・アシュトンで、レオニード・マシーン、ロバート・ヘルプマンら舞踊史に残る巨匠たちも出演している。
バレエ版では、モーリス・ベジャールが1961年に取り上げているが、スコティッシュ・バレエの芸術監督を務めたピーター・ダレル振付版(1972年)が著名。アメリカン・バレエ・シアターでも上演されている。日本では牧阿佐美バレヱ団がレパートリーとしており、2002年には12年ぶりに再演されて話題となった。老詩人ホフマンを哀れ深く演じた森田健太郎の秀演、彼の過去の女性たち3人を演じた田中祐子、上野水香佐藤朱美らの華麗なる競演が今でも忘れられない。もっとも以前には、大原永子や川口ゆり子、大畠律子ら日本のバレエ史に残るプリマがそろい踏みしてもいる。優れたプリマを何人も要する大作であるが、ぜひ再演を期待したいところ。
日本では邦人の海外進出のパイオニア深川秀夫が全幕ものとして振り付け、深川自身代表作と自負しているようだ。2008年には名古屋の松岡伶子バレエ団の「アトリエ公演」にて「アントニアの場」が上演された。アントニアを繊細、大胆に演じた伊藤優花の好演が光っていた。ジョン・クランコに師事、アシュトン作品も踊った深川のドラマティックな資質が発揮されたものとして評価は高い。こちらも再演を望みたい。



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