東京バレエ団海外公演700回と高岸直樹・由良之助

先日、東京バレエ団ミラノ・スカラ座での『ザ・カブキ』公演をもって海外公演700回を達成した。東京バレエ団のblogのほかネットメディアでも取り上げられている。
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海外公演700回目は偉業だが、さらに驚いたのが、記念すべき海外での700回目の公演で主役の由良之助を演じた高岸直樹が、2年ぶり64回目の登板だったこと。1986年の初演時に傘持ち役で初舞台を踏んだ高岸であるが、翌1987年に由良之助に抜擢されて以来内外で演じ続けているというわけだ。これは凄いことではないだろうか。
くるみ割り人形』『白鳥の湖』といった頻繁に上演される古典全幕の主役や現代作品の小編・中編の主役(たとえばベジャールでいえば『ボレロ』など)であれば、100回、200回と主演するのは不可能ではないが、現在、創作もののグランド・バレエ大作で64回も主演するというのは世界的に見ても例外に属するだろう。しかも、全2幕ほぼ出すっぱりで途中に7分半にも及ぶ超絶ヴァリエーションまで含むダンサー泣かせの振付だ。四半世紀近くにわたって踊り続けるのは並みのスタミナと精神力ではできないはず。公演場所に関しても国内以上にパリやベルリン、それに今回のミラノにある著名歌劇場や欧州はじめとした各国の主要劇場での上演が圧倒的に多いのも特筆される。
由良之助役の系譜は初演時のエリック・ヴ=アンと夏山周久、その後は高岸、後藤晴雄、そして今春はじめて踊った柄本弾と続くが“高岸由良之助”の異名も取るように、高岸といえば由良之助。もはや切っても切り離せない。勇壮、剛健な日本男子ぶりは嵌っている。日本では2008年にベジャール追悼公演で踊ったのが直近の舞台となる。今回のミラノでの舞台は久々だったわけだが、日本でも機会あればぜひもう一度踊って欲しい。力強く健康的な色気を振りまく『ボレロ』のメロディ役とともに。
Vous avez dit Béjart ? - Kabuki -