シャンソンの重鎮・石井好子死去とシャンソン&バレエ
日本シャンソン界を代表する歌手・石井好子さんが17日亡くなられた。享年87歳。
戦前に東京音楽学校(現・東京芸大)声楽科を卒業。ドイツ歌曲を学んだのちジャズに転向した。50年にアメリカ留学したあとフランスに渡ってシャンソンを学びヨーロッパ各地で活躍後54年に帰国。シャンソン界の第一人者として活躍を続けた。
石井がアメリカ留学を決めた時、彼女が歌手を務めていたスターダスターズのリーダーが、石井のためにさよならコンサート開いた。司会に森繁久弥、トニー谷。ゲストに淡谷のり子という豪華メンバーが顔をそろえたが、その際に花束を贈呈したのが当時日本バレエ界を代表するプリマであった貝谷八百子だったという。
http://www.i-sys.info/serial/interview/7/interview7_2.html
バレエとシャンソンの関係で言うと、名曲「枯葉」は、戦後まもなくローラン・プティ・バレエ団のステージ「Rendez-vous」の伴奏音楽としてコズマが作曲したメロディーが原型である。プティはシャンソンも唄うミューズのジジ・ジャンメールのレビューも多く振付けた。パリジャンのプティと同世代でこちらは自ら“地中海人”を自称した故モーリス・ベジャールにもジャック・ブレルやバルバラ曲を用いた『ブレルとバルバラ』などがある。
わが国では、モダンダンスの巨匠マーサ・グレアムに師事したのち帰国、独自の舞踊スタイルを貫いているアキコ・カンダが秀作『バルバラを踊る』をたびたび再演して代表作とした。近年では神戸の貞松・浜田バレエ団の長尾良子が創作した『セ・シ・ボ・ン』がシャンソンの名曲集にのせた滋味豊かなもので忘れ難い。評論では、戦後シャンソン評論を発表した蘆原英了がバレエ評論でも多大な功績を遺した巨人である。
唄い手としてのみならずシャンソン普及や後進を育成することにも熱心であった石井の死去はシャンソン界にとって大きな痛手であろう。謹んでお悔やみを申し上げたい。
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