東京バレエ団『ジゼル』アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー主演初日&全国ツアー

東京バレエ団『ジゼル』全幕@ゆうぽうとホール(9/8-9日)初日を観た。ジゼル役にアリーナ・コジョカル、アルブレヒト役にヨハン・コボーという、英国ロイヤル・バレエ団屈指の名プリンシパルにして公私に渡るコンビを迎えた公演として注目された。
コジョカルは一昨年、ダンサー生命を脅かしかねない大怪我を被り、そこから復調をみせた。昨年の「世界バレエフェスティバル」出演や東京バレエ団くるみ割り人形』客演は世評的には好評であったが、個人的には以前ほどの精気は感じられなかった。その点、今回は、彼女ならではの背中や腰のラインの美しさも存分に映え充実した出来に思う。4年前のマニュエル・ルグリとの共演時も話題を呼んだが、コボーとのパートナーシップのすばらしさは格別だ。コジョカルもさることながらコボーの演技を称えたい。一挙手一投足が考え抜かれた隙のない演技に加え、デンマーク・ロイヤル・バレエ出身らしくロマンティック・バレエのスタイルに習熟し、さらに英国にて数々のマクミラン作品に出演して体得したと思われる視線の演技の雄弁さが相まって奥の深い演技をみせていた。当代のアルブレヒトとして、ルグリ、マラーホフに勝るとも劣らない名演だ。
古典作品には型というものがあり、そこをはみ出すことは許容され難い面がある。しかし、20世紀後半のクランコ、マクミラン、ノイマイヤーといった巨匠のドラマティック・バレエの名作を受けたうえで古典作品を演じ解釈して踊れば、従来の概念とは異なる、より現代に即した深みある演技につながる場合も。コジョカルとコボーは、パートナーとしても相性抜群であり、分かち難い信頼感のうえで緻密なパートナーシップを築きあげ感動的な舞台を生んだ。ことにコボーは、小林紀子バレエ・シアター『レイクス・プログレス』や英国ロイヤル・バレエ『うたかたの恋』などで披露したエキセントリックな怪演に注目が集まるが、本来のノーブル・ダンサーとしての魅力を余さず示して絶品だった。


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なお、東京バレエ団は『ジゼル』を携え、これから10月頭にかけて全国公演を行う。主演はバレエ団キャスト(斎藤友佳理×木村和夫、吉岡美佳×後藤晴雄、上野水香×高岸直樹、佐伯知香×長瀬直義)であるが、そのメンバーの紹介記事を東京公演との共通プログラムに寄稿した。一部は各主催者のHPから読める。ご高覧いただきたい。
【横須賀公演】いよいよ公演! 東京バレエ団「ジゼル」主役ダンサー2人の魅了に迫る(斎藤友佳理・木村和夫)
http://bit.ly/b0eCSX (PDF形式なので注意)
【大分公演】ジゼル 主演紹介(上野水香・高岸直樹)
http://bit.ly/azwrNp
東京バレエ団「ジゼル」(上野水香&高岸直樹)