ヤン・ファーブル、貞松・浜田バレエ団、モノクロームサーカス×服部滋樹(graf)、日本舞踊 五耀會、チェルフィッチュ

9/23(木・祝)〜25(土)までの3日間は関西・中国方面に取材出張&観劇に出ていた。改めて触れる機会もあるかもしれないので、ここでは簡単な報告のみ。
23日はまず兵庫・伊丹アイホールにてヤン・ファーブル『Another Sleepy Dusty Delta Day〜またもけだるい灰色のデルタデー』。先週「あいちトリエンナーレ2010」で3日間上演され東京からも多くの関係者やファンが足を運んだようだが、スケジュールの都合上、伊丹で観ることになった。ファーブルが最愛の母と愛する妻へのオマージュとして制作したという女性ソロ・ダンス。踊るのは日本公演に向けて新たにキャスティングされたというアルテミス・スタヴリディだった。ファーブルの信者は満足したのではないか。

NTFI ANOTHER SLEEPY DUSTY DELTA DAY

ファーブル公演終演後、尼崎のアルカイックホールへ。神戸を拠点に精力的に活動し水準の高い上演に定評ある貞松・浜田バレエ団のアルカイック定期公演第6回目となる『ドン・キホーテ』全幕を観る。キトリ役に期待のホープ廣岡奈美を抜擢。ここのバージョンは、ボリショイ経由のプティパ/ゴルスキー版をニコライ・フョードロフが改訂したもの。士気高くなかなか活気にあふれた舞台を楽しむ。

貞松・浜田バレエ団「ドン・キホーテ」DON QUIXOTE

24日は朝早くから岡山は宇野港から香川の直島にフェリーで移動、瀬戸内国際芸術祭2010へ。1日しか時間が取れないため直島のイベントや展示しか見られなかったが地中美術館はじめベネッセアートサイトや本村地区を中心に効率よく各スポットを回る。
          
          
          
お目当てはモノクロームサーカス×服部滋樹「直島劇場」。同島の本村地区をまるごと劇場化するサイトスペシフィックなダンス・パフォーマンスという触れ込みだ。診療所、古民家、桟橋というメイン会場のほか路地等で散発的にさまざまのパフォーマンスが繰り広げられた。島の日常の風景のなかにダンサーたちの身体が溶け合い、新たな光景を生み出していくのを追いかける。日常と非日常の境界が定かでなくなる。歴史ある街並み、海と緑に囲まれた豊かな自然のなかで贅沢な時間に浸りきることができた。
         
          
          
          
          
25日はマチネに大阪・難波にある松竹座にて五耀會の第4回公演を観る。日本舞踊を舞台芸術・鑑賞対象として今の観客に届けたいという想いから結成された日本舞踊界を代表する中堅実力者5人(西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黄、山村若)による会だ。昨年の5月に同劇場で旗揚げをしており、東京での2回の公演を経ての凱旋となった。『連獅子』『瓢箪鯰(ひょうたんなまず)』『忍夜恋曲者』『七福神船出勝鬨』と古典と創作を織り交ぜた多彩かつ意欲的な構成が光る。葛西聖治(アナウンサー)の解説トークも絶妙で初心者にも優しく日舞の魅力を伝える。メンバーが語るところによると、来年5月に東京公演(2日間)が決定したとのこと。さらなる躍進に期待したい。
          
五耀會の終演後は名古屋へ急行して「あいちトリエンナーレ2010」のパフォーミングアーツ部門参加のチェルフィッチュ『私たちは無傷な他人である』。今年、2、3月に行われた『私たちは無傷な他人であるのか?』と大枠では変わらないが練り上げた新作で今回が世界初演となる。シンプルな構成、堂々巡りとも評される独特な展開のなかに「幸福ってなんだろう?」と問いかけ、現在の日本の社会の深層に潜む問題を浮き彫りにする。俳優たちが他の人物の代理として語り・動くといった手法を突き詰める。劇作家・演出家:岡田利規の、歩みを止めない、つねに先を行く創作姿勢が際立っていた。
あいちトリエンナーレ2010パフォミングアーツ作家紹介
  
久々に3日間の遠征をしたけれども、できれば26日に名古屋でのバレエ公演を観たかったし、他にも「あいちトリエンナーレ2010」関連のイベントもチェックしたかった。が、時間的・物理的理由から断念した。とはいえ、バレエ、コンテンポラリー、日舞、演劇とバラエティ豊かかつ充実した公演に相次いで接することができ有意義であった。