平田オリザのメッセージと、こまばアゴラ劇場の支援会員制度

平田オリザの主宰する劇団「青年団」の本拠地として知られるこまばアゴラ劇場の公式ホームページに平田が寄せたメッセージがネット上等で反響を呼んでいる。
文化庁重点支援施設採択について(2011.4.30)
http://www.komaba-agora.com/info/
本年度から本格的に実施される「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」の採択結果を受け、同劇場オーナーでもある平田が述べたものだ。
同劇場は、全国で12施設のみしか選ばれなかった「重点支援施設」に採択された。しかし、助成金額は、昨年度までの文化庁の「芸術拠点形成事業」で受けていたものからすると大幅な減額になったという。要因を平田は、一昨年秋の「事業仕分け」のあおりを受け、助成金総額が大幅に減少したことにあるという。ことに同劇場の減額率は多大なものがあるようだ。詳しくは元記事を当たって欲しいが、これは同劇場だけでなく多くの公立・民間施設にとっても抜き差しならない問題であろう。内閣官房参与で、「芸術立国論」などの著書を持ち、賛否両論喧しい「劇場法」の旗振り役的存在としても知られる平田の発言だけに、重みというか切実なものがあろう。
こまばアゴラ劇場では、2003年から貸公演を廃し、劇場で行われる年間通しての全公演を劇場主催もしくは提携公演としている。青年団関連のみならず、若い劇団やアーティストとの連携・支援を行ってきた。ダンス公演もときどき行われる。夏と冬のフェスティバル「サミット」(現在は、サマーフェスティバル「汎-PAN」として年1回に統合)では、若いアーティストをディレクターに抜擢し、新鮮なラインナップを並べるなど意欲的。劇場に宿泊することもでき、各地の劇団やカンパニーに手厚いことでも知られる。
今後どうなるのか――。経営の合理化を進めるのは致し方なく「託児サービス」を5月いっぱいで停止するという。来年度の利用劇団の公募に関しては、利用料無料の「劇場主催公演」の枠を廃して、公募は有料利用の「提携公演」のみになるようだ。また来年度も減額が続く場合、支援会員制度自体を見直すことになるかもしれないという。
「観ることは育てること」をキャッチフレーズに支援会員を募ってきたことは、この劇場の大きな特徴であり魅力。支援会員の支援金が文化庁等の公的な助成金に加えて劇場の運営を支える費用に回る。劇場は支援会員に同劇場や小竹向原にあるアトリエ春風舎等で行われる公演の年間パスや回数券を発行し、同劇場が選別した各劇団・カンパニーは固定客+劇場の顧客を得ることができる。個人の観客同士が集い法人会員として皆で観劇するグループも存在する。会員のなかには、小劇場系演劇を中心とした熱心なシアターゴーアーや見巧者も少なくない。そういった観客のあいだで話題になってブレイクしたり、口コミで評判が伝わっていった団体も少なからずあった。
私も初年度から2、3年間、年間パス発行される特別賛助会員になっており、その後も回数券をもらえる通常会員に何度かなった。はじめて観る、あるいは普段は触手の伸びない劇団・カンパニーでも気軽に足を運べ、その後フォローするようになったものもいくつかある。制度が新たな出会いを生む場として機能する。そして、支援金によって微々たるものであっても舞台芸術の発展に寄与しているという自負というか心意気を示せるのもシアターゴーアーのプライドをくすぐる。システムは若干ずつ変更されているようだが、着実に実を結んできていたようだから、可能な限り続いてもらいたいと願う。


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