ローラン・プティ死去

10日、フランスの振付家ローラン・プティが死去した。享年87歳。
世界的振付家ローラン・プティ氏が死去
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110710-OYT1T00594.htm
パリ・オペラ座バレエ学校を経て、1940年にオペラ座に入団するが、長くは在籍せず退団し、自らカンパニーを作ってダンサー/振付家として活躍。公私のパートナー、ジジ・ジャンメールとのコンビで知られ、カジノ・ド・パリでレビュー・ショー等も行う。1950年代初めには米・ハリウッドに渡り、映画「アンデルセン物語」「足ながおじさん」等の振付を担当した。古巣パリ・オペラ座に大作にして代表作の『ノートルダム・ド・パリ』を振付け、1972年には、マルセイユ・バレエ団の創立とともに芸術監督として招かれ、世界中でツアーも行った。
日本では、三谷恭三が総監督を務める牧阿佐美バレヱ団が『ノートルダム・ド・パリ』『若者と死』といった代表作のほか、2001年に新作委嘱した『デューク・エリントン・バレエ』他をレパートリーに誇り、プティ作品紹介に努めてきた。熊川哲也のKバレエカンパニーは『若者と死』『カルメン』を上演し、熊川自身は新作委嘱ソロ『ボレロ』を踊っている。新国立劇場バレエ団は『こうもり』『コッペリア』をレパートリーに加えている。
三浦雅士氏によると、プティと同世代の故・ベジャールは、プティのことを“彼はフランス人というよりもパリジャンなんだ”と語ったという。これは重要な指摘に思う。彼は、粋で洒脱な佳品たち――ジャンメールへ振付けたレビュー作品や『こうもり』、『デューク・エリントン・バレエ』のような小粋で洒落のめした作品によって広く親しまれた。実際、そういった作品は、パリっ子の彼にならではの感性が反映されたものだろう。しかし、初期の『アルルの女』『カルメン』、それにその後の代表作の多くは、美と死に魅入られ破滅する男たちを描いた傑作群である。21世紀の現在、プティ作品は、いささかオールド・ファッションにも思われるが、時代を超えて抗しがたい魅力を放つのは周知のとおりだ。
謹んでご冥福をお祈りしたい。
なお、2012年の春には、新国立劇場バレエ団と来日するウィーン国立バレエ団が『こうもり』を、牧阿佐美バレヱ団が『ノートルダム・ド・パリ』を上演する予定になっている。奇しくも追悼という形の公演になってしまうけれども名匠の秀作をしかと味わいたい。




ローラン・プティ―ダンスの魔術師 (バレエ・オン・フォトグラフ)

ローラン・プティ―ダンスの魔術師 (バレエ・オン・フォトグラフ)


ヌレエフとの密なる時

ヌレエフとの密なる時


パリ・オペラ座バレエ団 「クラヴィーゴ」全幕 [DVD]

パリ・オペラ座バレエ団 「クラヴィーゴ」全幕 [DVD]