O.F.C.合唱舞踊劇『ヨハネ受難曲』の公演予告

きたる10月1日&2日、すみだトリフォニーホールで行われるO.F.C.合唱舞踊劇『ヨハネ受難曲』の公演予告が舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト「DANCING×DANCING」にUPされている。
http://www.kk-video.co.jp/schedule/2011/1001_Johannes-passion/index.html
J. S. バッハの大曲に大ベテランの佐多達枝(演出・振付)が取り組んだバレエ×合唱×管弦楽によるコラボレーション。愛と慈悲によって人類の救世主となったキリストの苦悩の最期をドラマティックに描いたもので(台本:河内連太)、2009年の初演時に反響をよんだ(O.F.C.サイトに初演時の批評・レビューが掲載されている)。
O.F.C.は、もともとカール・オルフ世俗カンタータカルミナ・ブラーナ」を舞台化するために設立されたもので、その後も同曲をたびたび再演してきた。今春、大震災発生から18日後に東京文化会館で上演挙行したことは記憶に新しい。O.F.C.では、他にもオルフの『カトゥーリ・カルミーナ』『アフロディーテの勝利』を舞台化し、『カルミナ・ブラーナ』と併せて3部作「トリオンフィ」として完成させ、ラヴェル「ダフニスとクロエ」、ベートーヴェン交響曲第9番」なども取り上げ活発に活動してきた。“人の声と身体の表現、器楽演奏、これらを理想的なかたちで結びつけた作品をO.F.C.は新しい舞台芸術”として確立すると標榜している。なかでも、『ヨハネ受難曲』は、合唱、舞踊、オーケストラが互いを高め合い、舞台美術や照明といった美的要素も充実。深みと広がりある舞台を生んで、創設15年にして新たな境地に達しつつあることを感じさせた。
今回の再演に際しては、ダンサーの顔ぶれが変わった。キリスト役を演じる堀内充はじめ石井竜一や武石光嗣、関口淳子ら初演に引き続いてのメンバーもいるが、マグダラのマリア役が島田衣子から高部尚子に変わったのが大きな相違だ。島田のピュアで清浄なマリアはまれに見るハマり役で、ウェットな質感・雰囲気の踊りを持ち味とする高部とは、個性も踊りも違うだけに、どのようになるのか興味をそそられる。男性ダンサーを増員しており、また、初演には踊りがなかった曲に新しく振付がついた場面もあるようだ。指揮はバッハ作品に定評ある青木祥也が前回に次いで務め、独唱・管弦楽にもバッハ・コレギウム・ジャパン等で活躍する古楽演奏家の名が目に付く。
キリストの受難劇というと、多くの日本人にはなじみが薄く入りにくいかもしれない。それに、佐多作品って、人間の業というかいやらしいところ、目をそむけたくなるようなところを容赦なく粘っこく描くので、後味は決してよいものではないことが多い。したがって、苦手な人はとことん苦手なはず。しかし、『ヨハネ受難曲』は、痛切で重い内容ながらクライマックスに向かって盛り上がり、最後には清冽な感動が押し寄せてくる。佐多作品で泣けるという珍しい体験をした。今回はたしてその再現となるのだろうか。