平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動の決定

平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動が決定し4月9日公表された。
平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動の決定について
http://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/kikin/joho/h24/24_1hojyokin.pdf
総額は3,385,000(千円)。直近でみても22年度が4,130,400(千円)、23年度が3,824,500(千円)なので年々減少。「厳しい状況」は一層強まったといえる。
舞踊部門の採択は35件(応募56件)総額409,000(千円)。直近2年でみると22年度は56件採択(応募67件)総額478,100(千円)、 23年度は45件採択(応募位63件)総額464,200(千円)なので採択件数・助成額ともに年々大幅減少している。各団体とくに予算のかかる大規模なバレエ公演を制作する団体にとって採択の可否は死活問題。
今年の状況を観てみよう。
バレエでは以下3団体の健闘が目につく。財団法人 橘秋子記念財団(牧阿佐美バレヱ団)が4件で67,100(千円)と最多採択件数・受給額。『ロメオとジュリエット』、『ア・ビアント』、『デューク・エリントン・バレエ』、『眠れる森の美女』という古典、創作、ローラン・プティ作品を並べた豪華なラインナップである。昨年度に続き3本採択されたのが財団法人 スターダンサーズ・バレエ団。総額39,800(千円)。『シンデレラ』、ピーター・ライト版『ジゼル』、鈴木稔が新振付する『くるみ割り人形』が対象となる。創立40周年を迎える小林紀子バレエ・シアターもケネス・マクミラン『アナスタシア』日本初演小林紀子による新版『くるみ割り人形』という新制作2本により35,800(千円)受給する。
例年最多採択数・助成金額の公益財団法人 日本舞台芸術振興会(チャイコフスキー記念東京バレエ団)は今年前半、5月のパリ・オペラ座からの招待公演や「ダンス・ダンス・ダンス@横浜」参加公演、「世界バレエフェスティバル」全幕特別プロなどが活動の中心となる。秋以降の3件で47,400(千円)。クランコの名作『オネーギン』、ベジャール版『くるみ割り人形』、『ボレロ』『中国の不思議な役人』『ギリシャの踊り』によるベジャール・プログラムが対象となった。神戸の貞松・浜田バレエ団は総額22,800(千円)を受給し東京公演含め3件採択。近年の活動の高評価が反映された形だ。他に地方では名古屋の越智インターナショナルバレエと大阪の法村友井バレエ団が1公演採択。
関東圏のバレエ団で初採択となったのが一般財団法人 東京シティ・バレエ団。創立45周年記念公演『ジゼル』に11,600(千円)が下りた。近年、2年に1度の自主公演もしくは芸術提携を結ぶ江東区ティアラこうとうで毎夏行われる全幕公演2日間のうち1日(バレエ団主催)に対して芸術文化振興基金が下りていたけれども重点支援事業の対象となるのは初めて(のはず)。2009年に一般財団法人化し、さらなる飛躍と経営の安定を目指してきた理事長の安達悦子ら首脳陣にとっては悲願達成であろう。
いっぽう、一昨年以降採択件数が減っていると思しき団体もある。昨年以降、各団体が毎年年末に上演している『くるみ割り人形』に対して軒並み支給が見送られる傾向にある(新制作版ならば別なのだろう)。助成総額が減っている厳しいご時勢のため致し方ないのか…。そして、首都圏・各地の団体のなかで、ここ数年定着していたところのいくつかの名前を見かけない。対象期間に公演がない、あるいは申請していないということも考えられるので、採択されなかったためかどうかは分からないが…。
コンテンポラリー系では「Kazuo Ohno Festival 2012」(大野一雄舞踏研究所)、「TOKYO DANCE TODAY」(財団法人 児童育成協会)、セッションハウス・レジデンス・アーティスト・プロジェクト2012「世界へ!」(セッションハウス企画室)、「Monochrome Circus ×graf ×山中透“TROPE 2.0”」(一般社団法人 ダンスアンドエンヴァイロメント)、コンドルズ東京公演(ROCKSTAR 有限会社)が採択された。常連で母体がしっかりしているところが選ばれた。特にセッションハウスとダンスアンドエンヴァイロメント(旧・京都の暑い夏事務局)の手掛ける公演は他の制度含め文化庁関連助成に強い。
フラメンコでは「小松原庸子 スペインと50年 “私のマエストロに捧げる”“血の婚礼”」(株式会社 ソル・デ・エスパーニャ)、「鍵田真由美フラメンコリサイタル(仮称)」(株式会社 ARTE Y SOLERA)、舞踏では大駱駝艦・天賦典式 創立40周年公演(キャメルアーツ株式会社)、日本舞踊では「走れメロス」(社団法人 日本舞踊協会)が採択された。
文化芸術振興費補助金による助成事業は「トップレベルの舞台芸術創造事業」と称するだけに何よりも上演水準の高さが強く求められる。また、公演の実現性も大切に思われる。近年、助成金受給が決定していながら公演中止・演目変更となり受給が見送られた公演もあった(大震災関連等やむを得ないと思われるものもあるが…)。そこは厳しく問われてしかるべし。芸術団体のさらなる意識向上が望まれるところだ。
私的には上記2点に加え公益性の強いもの、地域を含む一般の観客層に訴求する活動をしているか否かを問いたい。特にバレエに対して、その思いが強い。この2月、ローザンヌ国際バレエコンクール受賞のニュースがメディアで大きく取り上げられた。なかにはバレエ教室が多くコンクールが盛んな「バレエ大国」などという、景気のいい報道も見受けられた。が、ダンサーたちの多くは公演活動に専心できない現状にある。公演の場を増やしていくための、あらゆる努力が求められる。いかに上演水準が高く関係者や愛好家にとって楽しめる公演であっても客席がガラガラであったり身内客ばかりというのは寂しい。公的助成金を投入する意義を問われもしよう。そこを変えていこうとしなければ未来は暗いと思う。助成対象団体には従来以上に自助努力に取り組んで欲しいし、それを後押しする助成評価基準の策定も必要ではないだろうか。