紫綬褒章に斎藤友佳理(チャイコフスキー記念東京バレエ団)

政府は2日、秋の紫綬褒章受章者を発表した。
舞踊界からは斎藤友佳理(チャイコフスキー記念東京バレエ団)が選ばれた。
秋の褒章に712人と24団体
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121102-OYT1T00024.htm?from=ylist
時事ドットコム紫綬褒章受章
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201211/2012110200079&g=pol
斎藤は横浜市出身。6歳より母親の木村公香からバレエを習う。10代半ばから旧ソ連時代のモスクワに短期留学を頻繫に行いボリショイ劇場でアサフ・メッセレルやマリーナ・セミョーノワらの薫陶を受けた。1987年、東京バレエ団に入団し内外の大舞台で活躍。ことに『ジゼル』『ラ・シルフィード』(ラコット版) のタイトルロールは高く評価され斎藤の代名詞といっていい。ノイマイヤー振付『時節の色』では作品の核となる“想い出”が斎藤のために振付けられた。2004年にはウラジーミル・マラーホフと踊った『ジゼル』、「東京バレエ団創立40周年記念ガラ」で高岸直樹と踊った『椿姫』のパ・ド・ドゥの成果により平成16年度(第55回)「芸術選奨文部科学大臣賞」受賞。
斎藤を語るうえで欠かせないのがクランコ振付の名作『オネーギン』のタチヤーナ役である。故ベジャールから、ぜひ踊るようにと太鼓判を押されたという。かつて「世界バレエフェスティバル」においてパ・ド・ドゥを踊る運びとなっていたが、諸般の事情から本番直前に上演許可が下りず断念しなければならなくなった。時は過ぎ、2010年の東京バレエ団初演が実現した際にも大ベテランのプリマでありながらトライアウトを経て役を得なければならなかった。結果として、各紙誌で近来にない大絶賛を浴び、日本バレエ協会制定「服部智恵子賞」、東京新聞制定「舞踊芸術賞」、「横浜文化賞」を受賞した。先日、2年ぶりに東京と神奈川でタチヤーナ役を踊り好評を博したばかりである。
斎藤の人生は波乱に富んでいる。『オネーギン』のエピソードもそうだが、1996年12月『くるみ割り人形』の上演中に大怪我に怪我を負ったこともある(1998年6月『ジゼル』横浜公演で劇的な復帰を果たした)。夫君はニコライ・フョードロフ(元ボリショイ・バレエ団プリンシパル)。2009年にはロシア国立モスクワ舞踊大学院バレエマスター及び教師科を首席で卒業している。2002年には半生を振り返った「ユカリューシャ」を刊行し話題となった。女性としての生き方に共感する観客・ファンも少なくないようだ。
先日、斎藤の母・木村公香が財団法人松山バレエ団顕彰「芸術賞」を受けた。木村は幼少時に現代舞踊の石井漠、戦後は巨匠・小牧正英に師事したのちソ連から派遣された教師が指導する本格ロシア派バレエ学校・東京バレエ学校に学んだ。日本の洋舞における本流を歩んで来た指導者である。子女の斎藤の活躍もその延長にあるといえよう。日本とロシア・旧ソ連の文化による架け橋としての功績も大きい。
斎藤と同世代では吉田都、下村由理恵が紫綬褒章を受けている。他にも名花が少なくない。彼女たちの踊りに接することができた喜びを噛みしめずにはいられない。



斎藤友佳理「ユカリューシャ」 [DVD]

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バレエを習うということ

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