小嶋直也 華麗なる復活と躍進!!(from 大阪)

現在発売中の雑誌「DDD」10月号の連載「関西バレヱ通信」に小嶋直也のインタビューが掲載されています。取材・文は関西在住の舞踊ジャーナリスト・菘あつこさん。


DDD (ダンスダンスダンス) 2009年 10月号 [雑誌]

DDD (ダンスダンスダンス) 2009年 10月号 [雑誌]

小嶋は日本を代表するダンスール・ノーブルとして活躍してきました。牧阿佐美バレヱ団や新国立劇場バレエ団において数多くの主役を踊ってきたのは周知の通り。精確な技術に加え、ステージマナーのよさをあわせ持ち、日本バレエの至宝と称して差し支えないでしょう。しかし、ここ5年ほど右膝の故障、そして、牧バレエのバレエ・マスターをはじめとして後進の指導に多忙なこともあって舞台に立つ機会は減少しました。
ところが2008年秋、小嶋は関西の名門最大手・法村友井バレエ団『白鳥の湖』全幕に主演、その報に多くのファン・関係者が驚きました。日本におけるロシア・バレエの第一人者である法村牧緒が牧バレエの総監督・三谷恭三を通じ出演を打診して実現したというものです。幸い舞台を拝見でき、依頼されて公演評を「オン・ステージ新聞」に寄せましたが、小嶋の衰えをみせない軽やかな跳躍や比類ない脚先の美しさ!に覚えた感激は忘れることができません。共演したプリマ高田万里が文化庁芸術祭新人賞を獲得。これも小嶋の丁寧なサポートによるところ大きく、男を上げました。
続いて今年6月には法村友井バレエ団公演に再び客演し、『ラ・シルフィード』(第2幕より)のジェイムズを高田と踊り好評を博します。精緻な足技を軽々とこなすテクニシャンぶりは圧巻であり、現在考えられうる最上のものではないかと心底感じたほど。ソロの場面において音楽のテンポを一段と上げての切れよい踊りには背筋がゾクゾクさせられました。しかし、それ以上に魅力的だったのがメランコリックな表情を帯びた演技。終演後、関係者の間では、深みとスケールを増した小嶋の演技の話題で持ちきりに。
「DDD」インタビューによると、小嶋の膝の状態は良好らしく、クラシック・バレエを踊るのには問題ないようです。後進の指導の激務の合間をぬってダンサー・小嶋直也がそのさらなる可能性を広げているのは、自団公演に抜擢・招聘した法村の慧眼も忘れてはいけませんが、公私ともに後押しする松田あってこそでしょう。今夏、松田主催のMRB「バレエスーパーガラ」の拝見&取材に大阪を訪れましたが、そこで小嶋は松田と『パキータ』を踊っています。両者のベテランらしい舞台さばきは見事で、パートナーシップも抜群。小嶋は堂々たるエトワールぶりをみせて一段と輝いていました。
インタビュー記事によると、小嶋は後進の指導に関して、教えることによって自身も得ることが少なくないとのこと。とはいえ、誰よりも精確・丁寧に、そしてステージマナーを大切にして踊る現役ダンサー・小嶋の存在は、後進にとって最高の鑑足るもの。真摯に舞台に向き合う姿勢や長年の経験によるアドヴァイス等は、「バレエスーパーガラ」の際にも競演した関西の若手男性陣たちにとっても刺激になっていたようです。
現在、小嶋は、大阪でしか大きな舞台に出ていません。可能であれば遠方から足を運んでも観る価値ある存在と思います。とはいえ、小嶋の華麗なる復活とさらなる飛躍をより多くの観客が目にすることができれば、と願わずにはいられません。