京都バレエ専門学校創立30周年記念公演―有馬龍子バレエ団―



ACADEMIE DE BALLET DE KYOTO 30th memorial recital-Arima Ryuko Ballet

日本初のバレエ専修学校として知られる京都バレエ専門学校。1976年に有馬龍子と有馬弘毅により創設され、今年で創立30周年を迎えた(現校長・有馬えり子)。名門パリ・オペラ座バレエ学校とも交流が深く、顧問に往年の名プリマ・イヴェット・ショヴィレ、芸術顧問には永年オペラ座バレエ学校の校長を務めたクロード・ベッシーが名を連ねる。「バレリーナのヘルスケア」などの著作でしられる蘆田ひろみも所属、指導。多くの卒業生たちの活躍も目覚しく、関西いや、日本のバレエへの貢献は多大なものがある。今回、創立30周年を記念して盛大に公演が行われた。

第一部、バレエコンサートの幕開けは、『VIVE MOZART』(振付:安達哲冶)。モーツァルトの「交響曲第25番」にのせ、ソリスト、アンサンブルが華やかに踊る。ミステリアスかつ天上的な響きが生徒たちの若さによく似合う。吉岡ちとせ&陳秀介(新国立劇場バレエ団)による『海賊』よりのグラン・パ・ド・ドゥ、竹澤智子&アンドレイ・クードリャ(田中規子バレエアカデミー)の『ラ・シルフィード』よりもまずますの出来栄え。桃谷百子ら五人の生徒がセルゲイ・サボチェンコ(NBAバレエ団)と踊った『パ・ド・シス』も充実していた。

この幕最後は、『エスメラルダ』よりのグラン・パ・ド・ドゥ。卒業生であり有馬龍子バレエ団で活躍する福谷葉子とパリ・オペラ座のプルミエ・ダンスール、カール・パケットの共演。パケットは、今春のバレエ団来日公演でブレイクした、時期エトワールの有力候補だ。キャラクター的資質が注目されるが、ノーブルな魅力もあわせ持つ。昨年の「ルジマトフのすべて」でドロテ・ジルベールと踊ったのに比べるべくもないが、ヴァリエーションの完成度はさすが。福谷も、タンバリンを用いながらの難度の高いヴァリエーションを巧みにこなし喝采を浴びた。

クラシックのみならず、コンテンポラリーも上演。『B-double』は、福岡雄大と福田圭吾によるデュオ。振付の矢上恵子は、ローザンヌほか国際バレエコンクールの課題振付を手掛けるなど国際的評価が高い。オフバランスの動きを多用した、ハードでパンチの効いた作風が特徴。本作では、両手を長いベルト状のゴムでつながれたふたりが、格闘技をおもわせるアグレッシブな動きを繰り広げた。『Fragments of a Dream』は、ジョーイ・チーキ&吉本真悟の共作共演。西洋のコンテンポラリー・ダンスの素養を持つ両者による濃密なデュオは見応え十分だった。

第二部には、『オーロラの結婚』が上演された。ニジンスカ版ではなく、『眠れる森の美女』の美女の第三幕の上演である。オーロラ姫は、卒業生の藤川雅子。デジレ王子は、パケット。両者の品のよさがにじみでる端正なパ・ド・ドゥに仕上がっていた。フロレスタン王に、往年のオペラ座エトワールでベジャール作品などでも知られるミカエル・ドナールが特別出演。舞台に厚みと華をもたらした。

カーテンコールに続き、来賓含め30年の歴史を築いてきた教師陣たちが紹介された。いまだ国立、公立のバレエ学校がない日本。そのなかで30年も前に、京都の地において初のバレエ専修学校を創設し、今日まで継続・発展させている意義は大きい。全国津々浦々のバレエスタジオ、首都圏、名古屋、関西を中心に意欲的な活動を展開するバレエ団は数多い。日本のバレエは、民間の力で普及し、質を向上させてきた。その歴史を改めて実感させられる公演だった。

(2006年7月23日 京都会館第1ホール)