首藤康之×シディ・ラルビ・シェルカウイ『アポクリフ』

首藤康之×シディ・ラルビ・シェルカウイ『アポクリフ』初日を観る。
ロッコ系ベルギー人で、最注目される振付家・ダンサーのひとりシェルカウイ。彼が聖書から排除された言葉を集めた外伝「アポクリフ」をモチーフにした本作は、かつてモーリス・ベジャール出世作春の祭典』を発表し、コンテンポラリー・ダンス界を牽引するアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが作品発表を続けてきたモネ劇場制作だ。
東京バレエ団で活躍し、マシュー・ボーン作品等でも才を発揮する首藤が2007年9月にシェルカウイと組んで初演し、以後世界各地で上演してきた。待望の日本公演だが、さすがに手ごたえのあるものだった。コーラスの ア・フィレッタ、衣裳 のドリス・ヴァン・ノッテンとのコラボレーションも緊密で、独特な美的世界を生むとともに刺激的なコンテンポラリーアートとして傑出していたと思う。詳しくは他で触れるため、そちらに譲るが、ダンス・ファンのみならず多くの観客に訴求し得る快作と断言したい。
思えば、首藤が東京バレエ団を退団して特別団員となったのが2004年の4月。はや6年が経った。ときおりベジャール作品において東京バレエ団に客演しつつ、演劇や映画に出演し、前記した「現代の古典」マシュー・ボーンの『白鳥の湖』ではザスワン/ザ・ストレンジャーと王子の二役を演じ、小野寺修二の演出・振付によるダンスと演劇とマイムの境界を越境した『空白に落ちた男』の成功の源となるなど、ジャンルを超えた身体表現者としての活躍が目立つ。個人的にも、2006年に刊行された「プリンツ21」冬号の首藤特集に寄稿する機会があり、また、『空白に落ちた男』に関しても初日観劇したあと媒体から公演評を頼まれ執筆した経緯がある。原稿を売り込まない主義の割には縁があると思う。首藤のマルチプルな活躍を今後も注目していきたいものだ。
Sidi Larbi Cherkaoui Apocrifu


prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

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Ballet Work 首藤康之の美しくなるバレエ [DVD]

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