佐多達枝・河内昭和バレエスタジオ第50回発表会

エリアナ・パブロワ、東勇作、松山樹子らに師事した佐多達枝。戦後に服部・島田バレエ団に参加して活躍した河内昭和。1954年に河内や小森安雄らが服部・島田バレエ団を脱退、それに佐多らも加わって青年バレエグループが結成された。白いバレエ(バレエブラン)に対して黒いバレエとも評された実存的な創作――『ひかりごけ』や『飼育』などを発表し戦後の創作バレエを活性化させた。青年バレエグループ内で主に振付を担当していた佐多と振付のほか制作面に長けた河内が結ばれ佐多・河内バレエスタジオを開設する。以来、これまでにハーレム・ダンスシアター等で活躍した奈良岡典子、NDT2などで活躍している首藤泉らを輩出。発表会は今回で50回目となった。
2部構成の前半には幼児・小学生クラスの踊る小品からジュニア、上級クラスの生徒が踊るものまで多彩な演目が並ぶ。注目はやはり佐多の振付作品。ジュニアクラスの3人に振付けられた『シャンパーニュ ポルカ』『マーチ』はショスタコーヴィッチ曲にあわせたものだ。生徒用の創作といっても佐多は一音一音を無駄にすることはなく踊り手は息つく暇はない。細やかな脚さばきを求められるが3人はよくこらえ溌剌とした演技を披露していた。『序奏とアレグロ』はスタジオの幹部クラスで佐多達枝バレエ公演にも出演する一線級と上級クラスの生徒、さらにはゲストの武石光嗣、石井竜一も出演。エルガー曲にあわせたものだが出演者は細やかな音取りをつかみ、佐多独自の、前後左右さまざまの空間を自在に捉える多彩な動きもよくこなしていた。2部では『シンデレラ』全幕が上演された。振付は斎藤隆子。2幕構成にまとめ、それぞれ冒頭にはナレーションを加え物語の展開をわかりやすく説明する。シンデレラ役は、1幕はジュニアの生徒、2幕は幹部の澤井貴美子。王子に武石、道化役に石井とゲストを配する。生徒たちの力量にあわせ無理のない踊りを配して手堅い舞台に仕上げていた。
長年にわたり創作を発表してきた佐多であるが、個人の公演は今夏に行われたものをもって一段落するという。とはいえ来年も芸術監督を務めるO.F.Cにおいて大作『ヨハネ受難曲』を発表、期待が高まる。また今秋から来春にかけて新進振付家のためのワークショップ(アーツ・チャレンジ2009 )の講師として後進の育成に携る。日本が生んだ世界水準で誇りうる振付家の活動からますます目が離せないことは確かだ。
(2008年10月19日 なかのZERO大ホール)